【追記】2020年1月15日
小泉進次郎環境相が育休を取得する意向を示したようです。
(せんたうろ)
いいゾー
「にこいち育児」は小泉環境相の育休取得を応援しています。
追記ここまで
(せんたうろ)
小泉進次郎には育休を取ってほしいナー
男性の育休取得はメンズリブ
今私が読んでいる、プリンストン大学教授のアン=マリー・スローターが書いた「仕事と家庭は両立できない?」(原題:"Unfinished Buisiness")の「女性運動の次は男性運動」という章に下の一文があります。
もし息子たちにこう教えたらどうだろう?母親や他の女性たちが女性の役割を広げてきたように、男性も人生の中で社会的な役割も経済的な役割も広げるチャンスがある、と。男らしさは人それぞれで、自分が選んだ方向にそれを合わせられると教えたらどうだろう?
女性が「女性らしさ」の解放を訴えて家庭より仕事を優先したのが女性運動とすると、男性の育休は、仕事より家庭を優先する男性運動(メンズ・リブ)ということになります。著者はこれを男性女性双方にとって良いことだと論じています。
私も同感です。女性の社会進出は止まらないのに、女性を排除しようとした医学部不正入試問題にみられるように、「継続的な労働力が欲しいから、いずれ産休育休を取る女性は採用を控えよう」とされる社会では少子化は進む一方です。男性も育休を取る人が増えれば、その点において会社が女性を忌避する理由がなくなります。男性も義務ではなく、自分の選択肢が目の前に置かれているという認識でいいのだと思います。
なぜ父親の育休が望まれるのか
①母体の問題
普通分娩にかかる時間は初産で平均で10〜12時間。程度は人によりけりだけど、難なく出産を終えたとしても、大きくなった子宮を戻す収縮などがあり、ダメージは大きい。無痛分娩にしたところで出産時に痛みを軽減するだけなので、歩くこともままならない人もいる。
我が家は、逆子だったので予定日前倒しでの帝王切開。切って取り上げるまで10分とかからないけど、2日は身動きに「非常に」苦労して、7か月経った今も傷跡が疼くといいます。
②夫婦間のバランス
男性の育休は、つまるところ各家庭の家族構成や経済事情、就業形態によるので、私は、夫婦がよく話し合って満足していれば、どんな形でも問題ないと考えています。
我が家の場合、不妊治療の頃から、女性への有形無形の負担がとにかく大き過ぎて、せめて、というレベルで育休を取ることは絶対条件でした。
③オキシトシンの影響
自閉症の治療薬は?― オキシトシンの可能性 ― - 独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所
オキシトシンの動物実験における社会性・対他関係に対する効果は、プレーリーハタネズミや羊におけるつがいの形成や母性行動の発現ですが、これらはつがい以外の動物や自分たちの子ども以外に対する攻撃性の増強(選択性の形成という重要な母性行動)を含みます。
「幸せホルモン」などと呼ばれるオキシトシン。授乳などで分泌されるといいます。これも男性は理解が難しいところですが、子供を守るために攻撃性をあげるドーピングみたいです。
私は、他者への攻撃性も適度であればむしろ健全と考えていますが、我が家でも口喧嘩の頻度は増えました。(もっとも、これは育休で接する機会が増えたということもあるかもしれません)夫は、妻子とその他の人との緩衝材になるのが義務なのではと考える次第です。
➃祖父母からの援助は状況によりけり
https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/095.pdf
子供という新しいメンバーを迎えて、当初は生活リズムも全て自分でコントロールできない状態。面倒をみる人がふたりいれば、少し見ててもらってトイレなど雑事ができるのに、という場面が非常に多くなります。この時期に祖父母からの援助で一番ありがたいのは家事や保育の援助ですが、こちらの労働政策研究機構の調査ではふたり親世帯では「月に2回以上」で18%、「子供の世話援助(月に2回以上)」で30%となっています。すごく、少ないと思います。
祖父母の役割について、我が家は、ふたりとも育休を取ることで収入が減ってしまうことから、東京のマンションを引き払い、千葉の私の実家に引っ越し、ほぼ一体となって家事育児を手伝ってもらっています。貧乏人ほど、使える資源は遠慮せず使わなければいけないと思うし、手伝ってもらうことで仲良くなるという効果もあると考えています。我が子の育児に全く関わらなかったと述べていた私の父は、孫の世話をする中で「子供って可愛かったんだな」という迷言を残しました。夫婦で育休が取れたからこそ、実家に引っ越すという選択ができたと思います。
男性の育休取得率が低い理由
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000174277_3.pdf
2018年度の男性の育休取得率は6.16%です。2017年の調査によると、男性が育休を取得しなかった理由の1位は27.8%の「職場の人手が不足していた」なので、これはまだ理解できますが、2位、27.5%の「会社で育児休業制度が整備されていなかった」はただの周知不足です。育児休業給付金の出処は会社ではなく、保険です。制度の整備といっても給与担当がハローワークと出勤状況のやりとりするだけです。国の制度なので、整備されてない方がおかしいし、産休育休に入る女性はどうしてたのかと思います。
育児取得率の改善策(海外)
育休制度は世界1位なのに 日本のパパが5%しか育休を取らない理由 | 文春オンライン
上の記事はノルウェーの男性育休取得率が3%から70%まで伸びた理由についてこう記述しています。
会社の上司が育休を取ったときの部下に与える影響は、同僚同士の影響よりも2・5倍も強いことがわかりました。やはり、上司が率先して育休を取ることで、部下も安心して育休を取ることができるようです。
育休制度が変わることで、一部の「勇気ある」お父さんたちが育休を取り、彼らが不利に扱われないことを目にした同僚たちがそれに続くといったメカニズムがここでは働いている
一方で「近しい人からは影響を受けるけれど、あまり関係の強くない他人からは影響を受けないようです」という記述もあります。今回話題の小泉進次郎などの国会議員が育児休業をする際には「ただ議会に出ない」という状況なので、一般の労働者のように給与も減らないという事情があります。不公平感があるという指摘はその通りでしょう。
というか、議会の欠席などは諸事情により可能なので、本件に関係ない議員からすると、このことにより国会議員の給与体系に疑問を持たれたくないというのが本質のような気もします。「国会議員が育休取っても不利益を被らなかった」という事例にしてほしいところです。
育休を取る際の流れ
女性の場合は、外見が変化してしまうので、目立つ前に職場に報告するというのが通例のようです。男性は、当たり前ですが、そういった切迫した事情がないので、言い出すタイミングを選べるという見方もできます。
妊娠から出産までおおよそ40週。流産の危険の峠を越えるといわれる目安が5か月目の「戌の日」です。16週からは安定期といわれ、20週目を越えるとつわりなどもひと段落します。私は、この頃に直属の上司に報告しました。また、人事担当の手続きや人員配置の問題もあるので、30週を超えた時点で上司の上司である幹部にも報告しました。(少し時間をおいたのは、安定期とはいっても高齢出産でもあり、不安ではあったことと、直属の上司が、私にはできないレベルで「それなりに穏便に」広めてくれるだろうという期待もあったため)
開始する時期について、私は、年度の区切りに合わせて4月から1年間というのが職場の都合上、取りやすかったので、当初から出産2か月後ということで申請していました。ただ、何事も最初が一番大変なので、これから取得を考えている男性は、出産直後から開始することが望ましいと思います。
なお、育児休業のキモである育児休業給付金について、いろんな媒体で言及されているところですが、自分で手続きしない限り2か月分がまとめて入ってくる仕組みになっているため、その間のキャッシュフローが死ぬほど悪化します。私の場合は、4月1日から育児休業に入って、最初の振込が7月19日でした。(この辺は、また別のエントリで紹介したいと考えています)出産費用100万円とは別に、最低、4か月無収入で耐えられる貯金がほしいところです。
余談
増えてきたと言われている男性育児休業ですが、私の友人知人には取得者は現時点で一人もいません。現在検討中の人はいますが…。母親同士は、我が身を削って子供を産むという共通体験があるので「戦友」の雰囲気があります。これは別のシチュエーションで見覚えがあります。ハードなレースの完走者同士の連帯感です。そばで見ていると羨ましくなるやつです。父親同士にそういった雰囲気はもてるものでしょうか。わかりません。
(せんたうろ)
単純に、仲間がほしい…
(おしまい)